第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
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幸村様は手慣れた様子で敷物を広げ、手に持っていた包みを開いた。
幸村「尚文と佐助が連れ立って山に向かったって聞いたんだ。
どうせ飯も食わずに鍛錬してんだろうなと思ったら案の定だ。謙信様は気まぐれに俺についてきただけだ」
包みの中は三段重ねのお重で、中には美味しそうな料理の数々が並んでいた。
幸村「尚文、佐助について歩くと大変だぞ?寝食忘れてまきびしを探して歩いたり、今日みたいに山ん中駆けずり回って休むってことをしないからな」
佐助「それは語弊がある。俺だって休むときは休んでいる」
幸村「尚文をここまでボロボロにしておいてよく言うな、佐助」
佐助殿はくつろいだ様子で会話しながら履物を脱ぎ、敷物の上に座った。
謙信様は特に言葉を発することなく座っていたけど、立っている私に気付き『座れ』と命じた。
「いえ…謙信様や幸村様と同席はできません。私は持ってきたおにぎりがあるので向こうで休みます」
小姓の見習い風情が、畏れ多い。
なにかあった時のために謙信様の傍から遠く離れることはないけど、同席して食事をとるというのは咎められる行為だ。
謙信様はもちろん、幸村様は誰に対しても気さくに声をかけてくださるけど、一騎当千と謳われる立派な方だ。佐助殿だって謙信様の懐刀だと言われる優秀な忍びだ。
佐助「大丈夫。謙信様も幸村も、細かいことは気にしない人だから。
君を一人にしておく方が気にかかって仕方がない」
(そう言われると………断りづらい…)
謙信「二度も言わせるな、座れと言っている」
謙信様にじろりと睨まれて飛び上がった。
「は、はい」
有無を言わせない圧力に屈して、履物を脱いだ。
空いていた場所は謙信様と佐助殿の間。落ち着かず、ソワソワした。
佐助「緊張しなくても良いよ。遠慮なく食べて」
佐助殿が皿に料理をたくさん取って渡してくれた。
(佐助殿が神様に見える…)
「ありがとうございます」
私は小さく息を吐いて、箸をとった。