第13章 姫がいなくなった(信長様)(後編)
「信長様、相談があるんです。落ち着いたら佐助君に会いに行っても良いでしょうか」
信長「目的はなんだ」
「ワームホールの発生地点と時刻を計算する方法を教えてもらおうと。
今回は運よく帰ってこられましたが、そう何度も偶然が重なるとは思えません。
考えたくないですけど次回に備えておきたいんです。
またこの時代に帰ってこられるように……」
信長「猿飛佐助という男はワームホールの予測ができるのか」
「はい」
初耳だ。それを知っていたなら舞が姿を消した時に手掛かりを得られたはず。
信長「越後に………謙信のところへ行かせると思うか?」
「思います。信長様は合理的な方だから。未知の現象ならば猶更、取れる手段を取っておく方だと思います」
顔を赤らめていた時とは違い、勇ましい顔をしている。
守られてばかりではないところが舞の良いところだ。
図らずも俺と同じことを舞も危惧していたことが妙に胸を浮き立たせた。
またこの時代に帰ってこられるようにしたいというのは、俺のもとに帰ってきたいと言う気持ちの表れだ。
(取れる手段か……それならば……)
古木と若木が絡まり合っている藤を見る。
この枝のように境目もなく、この女と繋がっていたい。
信長「ふん。良いだろう。佐助に教えを乞うことを許す」
「ありがとうございます。物理や難しい算術は苦手ですが、頑張ってきます」
信長「よく励め」
「はい!ありがとうございます」
胸に手を当て、嬉しそうに笑う。
「そうだ!お礼と言ってはなんですが……以前のように膝枕をしましょうか?」
髪を撫でるのをやめて、自分の膝をポンポンと叩いている。
信長「囲碁の勝負をしておらんぞ?」
「お礼です。それに恋人なんですから、これからは勝負なんてしなくてもお好きな時に……どうぞ?」