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☆姫の想い、彼の心☆ <イケメン戦国>

第13章 姫がいなくなった(信長様)(後編)


信長「ふむ……美味い」


炒った木の実に塩がふってあるようだ。
空腹を覚えていたわけではないが、包みが空になったのは舞よりも先だった。


「お口に合って良かったです。私の体温で柔らかくなってしまいましたがチョコレートも美味しいですよ」


脳の栄養は糖分です!とニコニコ笑っている。
促されて食べてみれば甘い。油分を含み、舌に纏わりつくようにして溶けていく。

香りはほろ苦さを帯びているというのに、味は純度の高い甘さがある。


(金平糖や茶菓子とは違う甘味だ)


味わっているうちにあっという間に溶けてしまった。


(惜しい…)


「ふふ、私のリュックにたくさんチョコを入れてきましたので、後で一緒に食べましょう?
 あと、あちらの世でつくられた金平糖も持ってきたんです。
 ………秀吉さんに内緒ですよ?」


クスクスと笑いながら、人さし指を鼻の前で立てて『しー』という仕草をする。


(この女の笑い顔にはかなわんな)


呑気な笑顔が鬱屈とした気分を晴らしてくれる。


「顔色が戻って良かったです。さっきは少し元気がなさそうでした」

信長「……」


躊躇いがちに手が伸びてきて髪を撫でられ、黙ってそのままにさせておいた。

他人に髪を撫でられるなど終(つい)ぞ記憶にない。

思いのほか気持ちが良く、安らいだ気分になった。


(撫でる手が舞のモノだからか…)


後ろ盾もこの世の常識もあまりない舞。
良い意味で何もしがらみがない。

まっさらな存在は惹きこまれるのと同時に、安心できる。
天下人だろうが、町人だろうが同じく接する。

人は疲れるものだし、腹もすく。
夜は眠らなくてはいけないと口酸っぱく言われた。

こうして舞の前で憂いを見せられたのも、弱い部分を見せても構わない相手だからだ。

俺が甘えられる唯一の存在となっている。
そう思えば腕の中の存在が重みを増した。


(『重み』などと言ったなら、こやつは違う意味に捉えて膝から飛び降りそうだ)


呆けているのか敏いのかわからん女だ。
胸の内で笑っていると舞が意を決したように切りだしてきた。


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