第13章 姫がいなくなった(信長様)(後編)
信長「牽制しなくてはいけない輩が別に居たな」
「え?」
見上げてくる顔に笑みを返し、右手で着物の襟を引っ張り、首筋を晒した。
「信長様……?」
驚き、顔を赤らめた舞に首筋を近づける。
信長「付けろ」
「な!?え?何をですかっ?」
信長「所有の証を付けろ。貴様が自分をどう評しようと構わんが、俺は女中も、その辺の『凄く素敵な姫』に興味はない。
言っておくがこれを許すのは、後にも先にも貴様だけだ」
「信長様……」
後ろ盾もなければ、この時代の常識も知らないのだから自信が持てず、不安に思っているのだろう。
だがそのようなことは後付けでどうにでもなる。
(最も大切なのは舞の気持ちだ)
信長「舞が良い……そう言っている。
他の女どもを黙らせる印をつけろ…その口で…」
所有痕を付けやすいように首筋を舞の唇に近づける。
しばし躊躇っていたが、おずおずと顔を近づけてきた。
舞の髪からは、花を寄せ集めたような嗅いだことのない香りがした。
ちゅ……
「あ……、失敗してしまいました。もう一度…」
ちゅ……
信長「……」
吸う力が弱い。気付かれぬよう小さく笑った。
(この調子ではなかなか付かんだろうな)
二度、三度と柔らかな唇が触れるたびに、愛欲を煽られる。
「やっと付きました!すみません、何度も…。痛くなかったですか?」
ペロ……
所有痕が付いたと思われる場所を、申し訳なさそうに舐められた。
子犬が傷ついた場所を舐めるように…。
信長「っ」
誰にも明かしていないが俺は首が弱い。
毛が逆立つ感覚がして堪らなくなり、襟から手を放し、小さな頭をひき寄せた。
「わっ」
手の平にサラサラとあたる感触が愛おしい。髪に口づけて頬を寄せた。
髪の香りと舞の温もりが心を満たしていく。