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☆姫の想い、彼の心☆ <イケメン戦国>

第13章 姫がいなくなった(信長様)(後編)


(つまらん。しばらくぶりに戻ってきたのだから、もっと顔が見たい)


手頃な場所を見つけて腰をおろす。上には絡みついた枝が屋根のようになっていて、木陰を作っている。


(天気に恵まれたな…)


晴れ渡った空を、春の鳥達が愛の歌を奏で、草花は瑞々しい色をしている。


(舞が隣に居ると、目に映るものが鮮やかだ)


今まで抱いたことのない心のざわつきは、鎮めようとしても治まらない。
腕の中に居る女の温もりがそうさせてくれない。


信長「逢瀬に連れてきてやったのに顔を隠していてはつまらん。手を離せ」

「…信長様が他所を見てくれるなら」

信長「恋仲になったばかりの女の顔を見たいと思うのはおかしなことか?」

「う…」


(もう戻って来ないだろうと思っていた女を手に入れて、余所見をするわけがなかろうに)


強引に舞の手をのけると、目が潤み、顔は真っ赤に染まっている。


信長「何故そのように顔を赤くしている?」


舞はさっと視線を逸らし、唇を尖らせて文句を吐き出した。


「信長様が格好良いからです!ご自分の顔を鏡で見たことがありますか?
 黄金比率というか…もう、だめ…こんな近くで見ていたら頭がクラクラしてきました」


顔を隠したいのだろう。俺の身体とは反対の方向へ顔を向けた。


信長「腕に抱かれておいてそちらを向くな。顔を隠したいのなら俺の胸に顔をうずめろ」

「え………信長様の胸に顔を……?
 いえ、そんな大胆…いえ、無礼なことはできません」

信長「膝に乗っているのは無礼のうちには入らないのか?」

「う…まだ慣れないんです。私から信長様に触れるのはちょっと…」


(これでは恋仲になる前と変わらんな)


こちらが距離を縮めようとしても舞はスルリと逃げてしまう。
これでは恋仲になったとはいえ安心はできない。逃げたその先で誰かに掴まえられてしまう可能性がある。

先ほどの光秀と舞の様子が思い出された。


(こやつを狙っているのは俺だけではない)


そう思えば悠長に構えている場合ではない。
時を逃せば、小さな歪(ひずみ)が取返しのつかない大きな歪になることもある。

それは人間関係でも、戦でも同じこと。


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