第13章 姫がいなくなった(信長様)(後編)
「信長様、本当に良かったんですか?秀吉さん、凄く怒っていましたけど…」
前に座っている舞が心配げに振り返って見ている。
そこには俺達に逃げられた秀吉が立っている。
信長「そんなことは気にせんでも良い。それとも舞はあのまま小言を聞いていたかったのか?」
「……早く信長様と出かけたいなって思っていました」
遠慮がちに舞が笑う。
信長「俺を留め置くなど誰にもさせん。行きたい時に行くまでだ」
「秀吉さんも苦労しますね…」
信長「何を他人事のように言っている。今日のことは貴様も共犯者だ」
「う……秀吉さん、ごめんなさい」
信長「城に戻ったら言ってやれ」
手綱を片手で持ち、もう片方の手を舞の腹に回す。
帯を締めていない装いは、舞の柔らかな感触を伝えてくる。
もっと直に触れたいと……男の欲求が溢れ出る。
(外だというのにこの柔らかさには敵わんな)
苦笑し、馬の腹を蹴った。
おそらく無粋な秀吉は追ってくるだろう。
少しでも舞と二人きりで過ごしたいと、目的地まで急いだ。