第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
(うぅ……私は尚文、尚文……。こんな時は何か…)
恥ずかしさを紛らせるために、視界の隅に映ったキノコをぼんやり数えた。
(きのこが一本、きのこが二本……)
佐助「尚文さんは華奢だな。これでよく謙信様の刀を受けられるな」
腕を曲げ伸ばしされ、高く持ち上げられる。
(う~恥ずかしい…)
佐助殿に二の腕をムニュっと摘まんだ。
(きのこが89本、きのこが99本………!)
数もまともに数えられなくなってきた。
佐助「じゃあ次は…」
腕を調べ終え、何か書いていた佐助殿がそれらを置き、両手を伸ばしてきた。
(な、何!?次はどこっ!?)
佐助「尚文さん、すみませんがバンザイしてください」
「ばんざいとは?」
佐助「両手をこうです」
佐助殿が真面目な顔で両手を頭上にあげた。
「こ、こうですか?」
佐助「はい。そのままじっとしてください」
佐助殿は私の両手に肩を置き、こともあろうに胸を触り、お腹、わき腹へと手を移して、背中を弄った。
(きのこが100匹、きのこが101匹…あぁ、もう、駄目っ)
胸はさらしを巻いているけど、それでも旦那様でもない方にこれ以上身体を許せない。
「さ、佐助殿っ」
もうやめてくださいと言おうとすると、あっけなく両手は離れた。
え、と思った時には佐助殿は紙と筆をもって記録している。
その表情にはどこにも邪(よこしま)な意図は感じられない。
佐助「次はこの大木から、向こうの竹林まで走って、ここまで戻ってきてください。
全力疾走でお願いします」
「はい」
そのあとも佐助殿の要求は続いた。
佐助「次はこの木に登ってみてください。できたら枝に腰かけて、そこから飛び降りてみて欲しい」
佐助「枝から枝に飛び移れますか?」
佐助「限界までこの縄にぶらさがってください」
佐助「反動無しで跳んでみてください」
佐助「張った綱の上を歩いてみてください」
一通り全部こなす頃には日が真上に達していた。