第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
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佐助殿の鍛錬は独特だった。
山の中腹に到着して、さて何をやるのだろうと思ったら『まずは足の裏をほぐします』と切り株に腰かけた。
裸足になり足の指を一本一本開くようにして、その後、拳より一回り小さな丸い玉を踏んづけながら転がせと言う。
言われた通りにすると足裏が丸い玉に刺激されて気持ちがいい。
「このようなことをするのは初めてですが気持ちが良いですね」
佐助「足の裏を柔軟に保つのは重心を安定させるのにとても重要なことなんです」
「なるほど…」
二人で玉を転がしながら、下半身の筋肉について講義を受けた。
佐助「下半身の筋肉は大きく分けるとお尻、太もも、ふくらはぎです。
3つの筋肉をバランスよく鍛えると良いですよ。あとで尚文さんの筋肉の付き方を確かめて、どの筋肉が弱いか確かめます」
「…ぅ?は、はい」
(確かめるって……確かめるって………まさか触って!?)
覚悟して臨んだけれど、やはり殿方にお尻を触られるのは耐えがたいもので、フルフルと震えてしまった。
佐助殿には『尚文さんはくすぐったがり屋なんだね』と都合よく解釈してくれて、なんとかなった。
(お嫁にいけない身体になってしまった……)
魂が抜けたように切り株に腰かけていると、佐助殿は私の記録を紙にしたためている。
佐助「尚文さんはまだ若いので全体的に筋肉量が少ないみたいだ。ふくらはぎはしっかりしているけど、お尻と太ももが圧倒的に足りない。
じゃあ次は腕を出してください」
「う、腕ですか?」
佐助「乗りかかった舟です。尚文さんの身体を徹底解剖して、筋トレメニューを作ります」
かいぼう、きんとれ、めにゅーとか、知らない言葉がぽんぽん出てきて頭が真っ白になった。
それでも何となく佐助殿が私のためにしてくれているのだとわかって渋々腕を出した。
すっ
なんのためらいもなく着物の袖を肩まで挙げられた。
「っ!」
着物の下に隠し、日に晒したことがない腕を殿方に見られて悲鳴をあげそうになった。