第10章 姫がいなくなった(幸村)
幸村「おかえり、舞。
ずっと会いたかった。2年後のワームホールに飛び込んで迎えに行こうとしてたんだからな」
畳みに広げられた荷物を押しのけて、舞の身体をひき寄せた。
少し冷えている身体に体温を分けてやる。
幸村「会いたかった………」
繰り返し呟いて腕に力を込めた。
「ありがとう幸村…。私も会いたかったよ。
いきなり居なくなってごめんね」
幸村「これからは夜眠る時は俺の腕の中で寝ろよ。
500年後に帰るなら、俺も連れて行け」
「えへへ、嬉しい。ありがとう、幸村」
頬を染めた舞が潤んだ瞳で俺を見上げてくる。
ふっくらとした唇に誘われるがままに口づけた。
「ん、幸村……ふふ、お酒くさいよ。昨夜は光秀さんと何を話したの?」
幸村「何って……男同士の話だよ。
そうだ!お前、光秀とどこで会っていたんだ?二か月前に光秀はどこかで舞と会って話をしたって言ってた」
その頃には舞はこの地に住んでいたし、もちろん城に安土の武将が来たなんてこともなかった。
「えっと、怒らないで聞いてね?」
幸村「内容による」
「えっとね、安土を離れる時にね、皆凄く心配してくれて…。
数か月に1回、安土の誰かが会いに来てくれることになったの。合図の狼煙があがったら城下のお茶屋さんで会う約束になってて…」
幸村「へぇ……、で、何を話したんだよ」
「幸村と仲良くやっているかとか、生活で困ったことがないか、そんな感じ。
政や戦に関わる話は一切していないから心配しないでね?
皆、本当に私がうまくやっているか心配みたいなの」
舞は申し訳なさそうに謝っている。
(数か月に一度ってことはもう何人かと会ったってことか)
そういえば一度、外をぼけっと見ていた舞が何かに気が付いて急いで出かけて行った日があった。