第10章 姫がいなくなった(幸村)
舞は城に戻ると荷物入れの袋から、これは信長様に、こっちは秀吉さんとお土産を次々出した。
その間も口はずーーーっと動いていて、起きたら500年後の自分の部屋で寝ていたとか、どうしたら戦国時代に戻れるのか考えてみたとか、本能寺跡に行こうかと思ったら家族に旅行を許可してもらえなかったとか、しゃべるしゃべる……
(こんなにしゃべって疲れないのか?)
気が付けば光秀の姿が消えていた。
(あいつ…まさか逃げたか?)
「それでねって、幸村、今の話聞いてなかったでしょう!?」
幸村「聞いてるよ…一応」
舞の眉が吊り上がった。
「何よ、一応って!」
幸村「聞いてるって。お前の話はちゃんと聞いておいた方が身のためだってわかったからな」
「え?」
なんのこと?というふうに舞が小首を傾げた。
幸村「聞き流したり、適当に相槌打っていると痛い目にあうってわかったんだ。
だから聞いてやる。だけどあんまり俺の前で他の男の話をすんなよ」
「他の男の人?」
幸村「例えば安土の連中とか……光秀の話とか……」
「男の人っていうか、お兄さんみたいな人達だよ。
ね、光秀さん!って居ないっ!?いつの間に席をたったの?」
幸村「お前の口があまりにもうるせーから退散したんじゃないのか?ま、俺はお前と二人きりの方がいいけどな」
「え……?」
舞の頬が淡く色づいた。
変な恰好しているけど、その表情を見ればそんなの気にかからないくらい可愛い。