第10章 姫がいなくなった(幸村)
もし光秀が良いと言われたら、適う気がしない。
幸村「俺ばっか心配して馬鹿みたいだ」
「そんなことないよ。私だっていきなり現代に帰っちゃったから、どうしようって凄く悲しんだし、悩んだんだから。
それに光秀さんは今しか居ないでしょう?幸村はこれから毎日ずっと一緒に居られるじゃない。
誤解しないでね?別に幸村より光秀さんと話したいっていう意味じゃないよ?」
(わかってるよ、そんなこと)
幸村「これからずっと一緒に居られるか、わかんねぇだろ。
今回は戻って来られたけど、次は戻って来られないかもしれないじゃねぇか…!」
「それは………そうだけど」
光秀「こら、幸村。そんなに舞を困らせるな」
幸村「うるせー」
光秀「二日酔いの上に、やきもちを妬かされて腸が煮えくり返っているのはわかるが、もう少し優しくしてやれ。
舞が泣いているぞ?」
幸村「っ!?」
慌てて身体を下ろし舞の顔を覗き込んだ。
幸村「悪い、泣かせるつもりは…って、泣いてない…」
「ふっ……ふふ。幸村ったら、光秀さんは悪戯が大好きなんだよって教えておいたでしょう?」
クスクスと笑う舞の目には涙ひとつ浮かんでいない。
(また光秀にやられた)
幸村「いいか、城門に戻って直ぐ帰れ!もう一泊なんてさせないからなっ!!!」
光秀「本気で舞を泣かせたいのならそうするが…?」
「幸村……ひどい」
若干わざとらしさを匂わせて舞が悲しそうな顔をしている。
幸村「こっ、の~~~~~~!」
二人の顔をじろりと睨みつけると光秀が吹き出し、舞がアハハと笑った。
光秀「ふっ」
「良かった、幸村と光秀さんが仲良くなってくれて!」
幸村「なってねーよ!!」
久しぶりにギャーギャー言い合いながら城へ向かった。