第10章 姫がいなくなった(幸村)
(俺以外にそんな可愛い顔を見せんなよ)
内心苛立つも、笑うななんて言えない。
「幸村も心配かけてごめんね」
幸村「おー」
「ふふ、ぶっきらぼうなところが幸村っぽいなぁ」
ニコニコと笑いながら舞は立ち上がった。
「あれ、右足のレッグウォーマーがない?」
光秀「これのことか?」
「そうそう」
舞はれっぐなんとかを受け取ると、器用にそれを身に着けた。
舞が布を引っ張りあげる仕草が妙に煽情的に映る。
「流石に寒いね。お城に戻ろう?
そうそう、光秀さん。安土の皆にもお土産を用意したの、届けてくれる?」
光秀「いいぞ」
幸村「お前、今、出立するとこだったじゃねえか…」
「そうなの?久しぶりに会ったからお話したかったのに…」
光秀「一日くらい日延べしても問題ない」
幸村「はっ!?」
突然帰ると言い出したから急な呼び出しがあったのかと思っていたのに。
「本当っ!?嬉しい!」
幸村「おい…」
光秀「寒くないか?」
光秀はいつも首にかけている布をとると舞の首に巻き付けている。
「わぁ…光秀さんの香りがする…良い匂いだし、あったかい」
光秀「お前のレッグなんとかも良い香りだったぞ?」
光秀は見たことがないような優しい笑みを浮かべ、舞は顔を赤らめた。
「や、やだ光秀さんったら…」
恋仲の俺をそっちのけで二人は話しを進めている。
幸村「この……っ」
「ひゃっ?」
履物を履いていない舞を肩に担いだ。
本当は優しく横抱きにしてやりたかったが、無性に腹が立って俵のように肩に担いでやった。
「やだ~。お姫様だっこが良い!」
舞が俺の腰をバシバシ叩いているが無視だ。
幸村「光秀、その荷物を持ってこいよ」
光秀「ふっ、わかった」
ズンズンと歩き出すと舞が文句を言う。
「もっと光秀さんと話したいよ~」
幸村「俺とは…」
「え、何?聞こえない」
幸村「俺とは話したくないのかよっ!すっげぇ心配したんだぞ!」
(二年も待てないって落ち込んでいた俺に対して、ひどすぎないか?)
やっぱり舞は光秀のことが好きなんだろうか…。
俺より大人で、外見だって良い。