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☆姫の想い、彼の心☆ <イケメン戦国>

第10章 姫がいなくなった(幸村)


――――

次の日の早朝。光秀一行の見送りをしに城門まで足を運んだ。


幸村「じゃあな、気をつけて行け。これは昨日の酒の礼だ」


光秀の家臣に重箱を包んだ風呂敷を渡してやる。
中身はおにぎりだ。


幸村「光秀の分は他の奴らよりでっかいからすぐわかる。
 卵焼きと梅干しと昆布の佃煮、それと沢庵が入ってる」


嫌がらせのように具を入れてやった。食べやすさなんて二の次、三の次だ。その綺麗な指先が米粒まみれになれば良い。


家臣「もしや幸村様がお作りになったのですか?」


重箱を受け取った光秀の家臣が驚いている。


幸村「あったり前だろ。昨夜急に帰るって言い出したから、お前達が帰るのを知ってるのは俺だけだ。
 こんな朝早くに叩き起こして飯炊きしろなんて可哀想だろう」


実は昨夜の酒が残っていて頭がズキズキ傷む。
けど昨夜の話は、二日酔いを押してでも見送りにでなければと思わせる内容だった。


光秀「律義な男だな。俺達が出立したら水を飲んで二度寝しろ」


俺の二日酔いはお見通しだと、余裕たっぷりに笑われた。


幸村「ぐ…。なんのことだ。せっかく早起きしたんだから村正と散歩に行く」

光秀「おや、正直者の幸村もたまには嘘を言うのだな」

幸村「!いーから、早く帰れっ。もう二度と来るなよ」


光秀の馬の尻を叩いてやろうか。


光秀「まあ、そうカッカするな。舞の心配事は俺の心配事だ。
 たまに顔を見に来てやる」

幸村「…いらねー。来なくていい。お前がここに来ること事態が俺の心痛になる」


ズキズキ傷む頭で目一杯の拒否をする。
光秀は切れ長の瞳を弓なりにしてニッコリと笑った。


(この顔っ…、何を言うつもりだよ…)


胡散臭さが倍増した。


光秀「そうかそうか、そんなに歓迎してくれるとは痛み入る」

幸村「お前なぁ~~、わざと言ってるだろっ」

光秀「俺の耳にはそう聞こえたのでな」

幸村「耳がおかしいんじゃねぇか、お前…」


このやり取りももう直ぐ終わりかと思うと、少し、本当に少しだけ寂しい気がした。


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