第10章 姫がいなくなった(幸村)
光秀「せっかく来たなら、『舞から聞いていた幸村』を見たかったのでな。
全部見られたわけじゃないが、そこそこは見られた。なかなかに面白かったぞ?」
幸村「くっ……ほんっと、お前、意地の悪い男だな」
光秀「舞から聞いていないのか。俺は意地悪するのが好きなんだぞ?
なんなら舞に加え、幸村も意地悪の対象に入れてやっても良いが…」
幸村「っ、入れなくていいからなっ!!!」
そっこー断ると、光秀が目元を和らげた。
光秀「その調子で過ごせ。舞は心底幸村に惚れていた。
たかが2年で消えるような想いではないだろう。お互いにな…」
幸村「……ふん、そんなこと最初からわかってたよ」
光秀「そういうことにしてやる」
光秀の笑いに居心地が悪くなる。
盃を取り上げられて手持ち無沙汰になった俺に、光秀は茶を煎れてくれた。
『光秀さんってね、意地悪だけど本当はすっごく優しいんだよ』
熱い茶をすすりながら、忘れていた舞の言葉を思い出した。