第10章 姫がいなくなった(幸村)
光秀「これを聞いたのは2か月前だ」
幸村「姿を消す1か月前…?舞はどこでお前と会ったんだ?」
光秀が胡散臭い笑いを浮かべた。
光秀「それはあいつと俺の秘密だ。聞きたければ舞に聞くんだな。
それでその時、あの小娘は俺にひとつ願い事をした」
幸村「願い事?お前に?」
(なんで俺じゃなくて光秀にお願いをしたんだ?)
光秀「お前にお願いしなかったのではなく、できなかったからだ。
何故ならあいつの願いは『幸村を助けて欲しい』という内容だったからな」
幸村「助けて欲しいって………別に俺は……」
俺を助けて欲しいだなんて、どういうことだ。
光秀「舞なりにささやかな頭で考えたのだろう。
『もし私が突然姿を消したら、それはワームホールのせいだと思うんです。
自惚れじゃなければ幸村はきっと…凄く寂しがってくれる。それも誰にも弱音を吐かず、ひとりで。信玄様や佐助君の前だと猶更平気なふりをすると思うから……光秀さん。私を探しに来たフリをして幸村の様子を見てあげてくれませんか?』
……随分いじらしいお願いだと思わないか?」
幸村「舞のやつ………」
光秀相手の方が、余計に平気なふりをするだろ!とツッコミをいれる。
光秀「お前の顔を見たら平静を装っていたが、昔のような輝きがなかった。
幸村は秀吉と同じでな、影でひっそりと生きる俺には眩しい。しかしお前にはその輝きが失われていた。だから少し手を加えてみたのだが…楽しかったろう?」
光秀が意地悪く笑った。
幸村「あれのどこが楽しいんだよ!ったく性格悪いな、あんたはっ。
茶を飲む時どんだけ意を決して飲んだと思ってんだよ。甲冑はゆるゆるだし、結んでやるとか言っておいて、紐を解いたんだろう!?」
光秀「ふっ、その調子だ。かしこまった幸村では俺も楽しくなかったからな」
幸村「なんでお前を楽しませなきゃいけないんだよ!」