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☆姫の想い、彼の心☆ <イケメン戦国>

第10章 姫がいなくなった(幸村)


『光秀さんって良い匂いがするの!すっきりしたなんとも言えない良い香り♡』


(これがそうか…)


冴え冴えとした香りは嫌味がなくて良い香りだ。
複数の香を組み合わせなければこの香りにはならないだろうから、おそらくこの香りを身に纏っているのは光秀だけだろう。

さらに気になるのは香りの強さだ。そんなに強い香りじゃないから、ある程度接近しなければ香らないはず。


(どんだけ光秀に近づいたんだよ、舞は!)


俺が知らないところで近づいただろう二人に、むかついた。
特にこだわりのない香をつけている自分にも、なんだかむかついてきた。

どうして俺は目の前にいるような大人の男じゃないのか。


(仕草も思考も、背の高さも、声の低さも!!)


髪だって普通より少し茶が多いくらいで、平凡だ。

モヤモヤした気持ちが上がってこないよう、酒を飲んで誤魔化した。


光秀「恋仲の相手が一番苦手とする男が俺だったから、だから舞は俺のことを話して聞かせていたのだと…俺は思うぞ?」

幸村「……?」

光秀「知らないから余計苦手、わからないから嫌う。
 だったら教えてあげれば良いじゃない…あの娘はそう考えた」

幸村「そんなこと……」


なに言ってんだと言い返したかったけど、できなかった。


光秀「お互いを知り、仲良くなって欲しいが、その機会はほぼ無いに等しい。
 ならば安土の武将と幸村、双方を知っている者が話して聞かせて垣根を低くしようと、あいつなりに頑張っていたんだ。
 ………まさかその行為が幸村の嫉妬を呼ぶとは考えずにな」


光秀ははっきりと『嫉妬』と言った。


幸村「嫉妬なんかしてねー」


ふいと顔をそらした。


光秀「そうか……?幸村が俺を見る目は終始『そういう目』だったように感じたが」

幸村「どんな目だったか知らねーけど、気のせいだ」


虚勢を張ったところで光秀にはバレバレだろうが、素直にそうだという男は居ないだろう。

舞の気持ちを考えずに喧嘩を吹っかけた自分は物凄く小さい男だ。

なんで光秀みたいに物事を広く見られないのか。情けなくなってきた。


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