第10章 姫がいなくなった(幸村)
幸村「はぁ、2年後か…」
上田城付近を探させていた捜索隊は引き上げさせた。
いくら探しても舞は居ないだろうと、早々に諦めた。
佐助の調べでは次回ワームホールが開くのは2年後になるという話だった。
幸村「そんなに待っていられるかよ」
待つしか手はないのか…城の庭にしゃがみ込んだ。
村正「わふっ」
勝手に城に入りこんだ村正が、落ち込む俺を慰めてくれた。
冬毛と夏毛が入り混じったボサボサの身体を撫でてやる。
あとで櫛をかけてやるか、と頭の片隅で考える。
まだそのくらいは余裕があるみたいだ。
「……2年経ったらお前はじーさんだよな」
乾いた笑いしか出てこない。
2年なんかあっという間だと思う気持ちよりも、2年も会えないなんてありえねぇという気持ちの方が大きい。
安土の連中と別れ、上田城までついてきてくれて…会いたい時に会える毎日だった。
喧嘩する時も多かったけど、あれはあいさつ代わりみたいなものだった。
喧嘩しているのを楽しみながら、心の底では繋がっている。そんな関係だった。
幸村「舞……」
女一人居なくなったくらいでと、そんなふうに思えなかった。
幸村「悪かったな、お前の話、もっと聞いてやれば良かった」
毎日花に水をくれて、あーだこーだ、とりとめのない話をしてくれる存在が…そこに居るのが当たり前になっていた。
お前が特殊な事情でこの時代に居るって知っていたのに。
何が当たり前にここに居ると思っていた、だ……。
浅はかな自分の考えに吐き気がした。