第9章 姫がいなくなった(家康)
「あのね、私が500年後に帰った時なんだけど」
馬に揺られながら舞が振り返った。
家康「うん」
「家康に会いたくて、少しでも近づきたくて、歴史の本を見たの。そうしたら私が知っている歴史と変わっていたところがあったんだ」
家康「へえ…」
どう変わっていたの?と俺が聞いてもいいものだろうか。
「あのね、家康と三成君は頻繁に書状のやりとりをして、互いの城を行き来するくらい仲が良かった、ってそう書いてあった」
家康「はっ!?!!??」
大きな声を出した俺に、すこし前に居た三成が不思議そうに振り返った。
何でもないと首をふるとニコリと笑ってまた前を向く。
今日も寝ぐせをつけているのが見えて、イラッとした。
「それを読んだ時におかしいなって思ったんだけど…。
もしかしたらこの子のおかげで、そうなるのかもね」
舞が呑気な顔をしていたけど、俺は笑えなかった。
すでに三成の城に数か月滞在したし、安土に居る間は舞の様子が気になって三成に何度も書状を送った。
未来で書かれていた内容が半分は現実になっている。
家康「ってことは、子供が生まれたら駿府に行こうと思っていたけど、三成が押しかけてくるってこと??」
「ふふ、そうなるかもね。私は大歓迎だよ?」
家康「やだ。俺は絶対やだ」
全身全霊で嫌だと言ったのに、その歴史は事実になる。