第9章 姫がいなくなった(家康)
家康「もう一人にしない。仕事の場をここに移す」
「……え?」
舞が目を丸くしている。
家康「舞は家族も友達も居ないんだから、俺が傍にいるのが当たり前でしょ。
数日以内に一旦安土に帰るけど、信長様に相談して佐和山城に居られるよう説得してくる」
舞の目がまたウルウルしている。
「ありがとう、家康……。そこまでしてくれて、嬉しい。
信長様を説得できなかったとしても、気持ちだけでも嬉しいよ。ありがとう」
家康「絶対説得してくるから。舞はゆっくり過ごしなよ」
「うん」
こうして俺達は幸せな再会を果たした。
徳川所縁の品が、何故俺しか運べないものだったか。
その配慮に悔しいけど感謝した。
――――
家康「舞、出発するよ。本当に駕籠じゃなくて良いの?」
「うん、家康の傍に居たいの」
安定期にはいった舞は安土で産みたいと言い、数か月ぶりに安土城へ帰ることになった。
舞は大きくなってきたお腹で苦労して馬にまたがると、俺によりかかった。
俺は片手で手綱を握り、しっかりと舞に手を回した。
「佐和山城ともお別れかぁ、寂しいな」
三成「またいつでもいらっしゃってくださいね」
「うん!」
家康「なんで俺の城に来たことがないのに、先に三成の城に馴染んでいるんだよ……」
「ふふ、ごめんね」
佐和山城で過ごしている間、当たり前だけど三成が度々安土から帰ってきて不便がないか気に掛けてくれた。
俺がどうしても安土に行かなくてはいけない時は、代わりに舞の傍についていてくれた。