第9章 姫がいなくなった(家康)
(第三者目線)
天主にて家康を案ずる二人が話をしていた。
秀吉「家康のやつ、相当無理していますね」
信長「仕事ぶりに問題はないが、張りつめた糸のように危うい。一度国へ戻らせるか……」
理由もなく国へ帰れと言われて納得する家康ではない。
越後に挙兵の動きがみられるから余計だ。
秀吉「このまま戦場に出れば家康がどんな戦い方をするかわかりません。
強引に押し切ってでも国で静養させるのが一番かと」
信長「家康は強引に押し切ろうとすれば身体が動く限りは反発するだろう。
あやつはそういう男だ」
秀吉が息を吐いたところで三成が天主にやってきた。
三成「信長様、秀吉様。お話中にすみませんが、お知らせしたいことがありまして参りました」
秀吉「なんだ?」
三成「実は私の城に……」
三成が持ってきた知らせは朗報だった。
信長「直ちに家康を呼べ。三成、出立の用意だ。
すぐに出られるよう人数は少なくしろ」
三成「はい。すでに取り掛かっているところです。
家康様の御殿にも人を向かわせておりますので、じきにいらっしゃると思います。
家康様がこの話を受ける頃には準備が終わりますので、すぐに出立致します」
いつになく速い対応に、秀吉が褒めた。
秀吉「気が利くな、三成」
三成「はい。私も早く参りたいので」
ニコニコと笑っている三成の顔からは真意は読めなかったが、早く行きたいと思っているのは間違いないようだった。
秀吉「今のは深い意味があるのか、三成?」
信長も面白そうに三成の顔を見ている。
三成「……なんのことでしょうか、秀吉様」
秀吉「いや、何でもないならいい」
そこに家康の到着の知らせが入り、秀吉は勘ぐるのをやめた。