第9章 姫がいなくなった(家康)
舞のことを考えればどうにかなりそうだっだから感情を凍らせた。
人が持つ温かさを失くしたんじゃない。
自ら切り捨てたんだ。
寂しい、悲しい、戻ってきてと考えてしまえば、心が押しつぶされてしまうから。
舞が居なくても平気、俺は大丈夫。
ほら、普通に生活できているでしょうと、偽ってきた。
三成が帰ってくると信じているのに、俺が信じてあげられないのは、
期待が適わなかった時、今度こそ俺は絶望してしまうからだ。
強がって平気を装って守っているのは俺自身の心。
可愛くて、温かくて、優しい舞を失って…平気なわけない。
家康「く、そ…。なんで思い出させるんだよっ!」
本を乱暴に閉じて、目に入らないように滅多に使わない戸棚にしまった。
舞への想いに溺れそうになって、息が苦しかった。