第9章 姫がいなくなった(家康)
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家康「へえ。乾燥させたやつしか見た事なかったけど、元はこんなに大きい葉だったのか」
一日の仕事を終え、御殿に帰る前に本を読み始めたら止まらなくなった。
家臣が行灯に火を入れてくれたのにも気が付かず、読みふけっていると……
天敵ともいえるアイツの足音が聞こえてきた。
(しまった。ここで読んでいないで、御殿で読めば良かった)
後悔したが遅く、襖の向こうで気配が止まった。
通り過ぎて行って欲しかったのに。
三成「家康様、ちょっとよろしいでしょうか?」
家康「俺は居ない。帰って」
三成「?」
廊下で控えていた家臣が慌てている。
家臣「家康様は今は読書中でして、申し訳ありませんが急ぎでなければ明日に……」
三成「なるほど読書中でしたか!では丁度良かったです!!」
暗に出直せと言われたのに三成は遠慮なく襖を開けて入ってきた。
眼鏡をかけて、頭には相変わらず寝ぐせがついている。
もう夜なのに、こいつは一日中寝ぐせをつけて歩いていたのか。
いつもだけど、今日はそれがさらに苛立たしく感じる。
家康「何?」
今日は三成と顔を合わせなくて済んで良かったと思っていたのに…ため息しか出てこない。
三成「家康様、今朝お貸しした本と同じ作者が、別の本を書いておりました。
朝の本と照らし合わせて読むと、さらに良いかと思いまして」
家康「え……」
三成が開いて見せた本の内容を見てみれば、確かにその通りだ。
家康「わかった。一応それも借りとく」
三成「あと……」