第8章 姫がいなくなった(秀吉さん)
秀吉「今度こそお前を大事にするから。傍に居てくれるか?」
「ふふ、ずっと傍に居たじゃない。それに秀吉さんはいつも私のこと大事にしてくれていたよ?」
秀吉「いいや、足りない。今日からはもっと甘やかして、可愛がって、大事にする」
「……駄目女にならないように気をつけます」
秀吉「なんだ、それ……」
秀吉さんがハハっと笑って身体を離した。
真正面から見つめあうと、鳥の時と感覚が違ってなんだか照れてしまう。
「秀吉さん……」
秀吉「なんだ?」
「秀吉さんって……素敵だね。鳥になっていた時、今まで知らなかった秀吉さんをたくさん見られたから、ますます大好きになっちゃった」
秀吉さんが照れたように目を細めた。
一番キュンとしたのは、皆の前ではバリバリ仕事しているのに、部屋に戻ると鳥の私にいっぱい弱音や悩みを言ってくれることだった。
しっかり者の秀吉さんしか知らなかったから、今までも誰も知らないところで人並みに悩んでいたかもしれない。
そう思ったら何故か今まで以上に『好き』が大きくなった。
「秀吉さん、これからもよろしくね」
秀吉「ああ。舞がどんなに大切な存在かよくわかったよ。こちらこそよろしくな」
身体を寄せると、秀吉さんはまた抱きしめてくれた。
お互いの温もりを感じ、二人同時に安堵の息をついた。
「秀吉さん……ただいま。ずっと一緒にいたからこんなこと言うのは変だけど」
秀吉「いや…。人間の姿で帰ってきたんだ、変じゃない。
おかえり、舞」
羽織の隙間にするりと手が入り込んできた。
「ん?」
まさかと秀吉さんの顔を見ると、困った顔をしている。
秀吉「舞が帰ってきたって感じさせてくれ」
「お、お昼だよ、仕事は!?」
秀吉「……舞は仕事に行って欲しいのか?」
「行って欲しくないけど、仕事は仕事って……あっ!」
鳥の私を撫でてくれた1本の指が、女の入口をツツと滑った。