第8章 姫がいなくなった(秀吉さん)
「秀吉さんのお仕事している姿、格好良かったよ。
このフワフワの髪がね、あたると凄くくすぐったかったの。
肩にのっていると秀吉さんの良い香りがして、もうずっと嗅いでいたいくらい!
でも本当に信長様大好きなんだって、ちょっとヤキモチ妬いちゃった。
あとね……心配かけてごめんなさい。私のせいでやつれちゃったね、ごめんね。
元の時代に戻りたいなんて思ってなかったよ。ずっと秀吉さんの傍に居たいって思っていたんだから…」
話は後だって言われたけど、心で思っていたことをそのまま伝えた。
「秀吉さんが変に誤解しちゃったのは私がちゃんと伝えていなかったせいだよね。
これからは思っていることをちゃんと伝えるね?
大好きだからね?あんまり言ってないけど、愛してるよ」
秀吉「わ、わかった!わかったから、もうすぐ部屋に着くから、少し待ってろ」
「やだ、口が勝手に動くんだもん」
『ちゃ!』しか言えなかった反動が凄い。
秀吉さんは足早に歩き、すぐに部屋に到着した。
襖を締めるなり、ぎゅうと抱きしめられた。
秀吉「とにかく…舞が帰ったんじゃなくて良かった」
抱きしめ返したいけど羽織を掴んでいるのでできなくて、ちょっと悔しい。
久しぶり感じる温もりに、身体から力が抜けるようだった。
指一本で撫でられる小さな体なんかじゃなく、こうして両腕で抱きしめてもらえる身体が凄く嬉しかった。
「ごめんね?朝起きたら鳥になってて、戻り方もわからないし、『ちゃ!』しか言えなくて……。
ずっと傍に居たから知ってるよ。秀吉さんが凄く私のことを心配してくれたこと」
秀吉「心配した…凄く。攫われたんじゃなくて良かった。
それに元の時代に戻ったんじゃなくて良かった。忙しいからって舞のこと一人にしていたから…怒って帰ったんじゃないかと思った」
「ふふ、怒って帰るなんて、そんなに子供じゃないよ、私」
いつも大人の余裕たっぷりの秀吉さんが、さっきから私に抱きついたままだ。
腕に力をこめて、子供のように離れてくれない。