第8章 姫がいなくなった(秀吉さん)
「チャチャ!チャチャ!チャッ!」
違う。もっと一緒に居たいって思っているのに、帰るわけないがない。
秀吉「ど、どうした、そんなに興奮して。お腹すいたのか?」
「チャ!(違う!)」
秀吉「大きい鳥でも居るのか?とりあえず中に入ろう、な?」
「チャ~~~~~(もう、違うったら!)」
怒りに任せて羽ばたいたら、秀吉さんの顔に衝突してしまった。
「チャ!?」
秀吉「ブッ!?お前、少し飛べたんじゃないか?
これで仲間のところに戻れる、な…………?」
衝突した時、硬いくちばしが秀吉さんの唇に触れた。
「チ!……チャッ!……あっ」
小さな殻がパキ!とひび割れるような感覚がして、あとは一気に身体が大きくなった。
凄く大きく見えていた秀吉さんや、庭の植木、安土城が、見慣れた大きさに見える。
「あ………ひ、で、よし、さん……?」
急に人間に戻ったから舌が上手くまわらない。
秀吉「お、お前………っ、舞だったのか!」
「う、ん。わっ!?」
秀吉さんは急いで羽織を脱ぐと私の身体に掛けてくれた。
(全裸だった!!!)
人目のある庭で、しかも今は昼過ぎだ。
羽織が落ちないように掴んだ。
「手…指があるって素晴らしい…」
変なことに感動していると秀吉さんが抱き上げてくれた。
秀吉「話は後だ。部屋に戻るぞ」
「うん。ありがとう、秀吉さん。大好き……」
秀吉「お前、こんなところで……」
秀吉さんの目元がふわりと染まる。
言葉で気持ちを伝えられるって、なんて幸せなことなんだろう。
鳥の間、ずっともどかしかった気持ちが爆発した。