第8章 姫がいなくなった(秀吉さん)
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秀吉「お前は米が好きなんだってな。信長様から聞いたぞ?可愛がってもらって良かったな」
夜になっても秀吉さんは御殿に帰らず、城の中にある自室に戻った。
止まり木を用意してくれていて、小さな器にお米や雑穀類、青菜が小さくちぎって置かれている。
「チャ~(わーい)」
羽黒がとってきた毛虫の後だと、どれもご馳走に見えた。
ツンツンとつついて頬張っていると、秀吉さんが私をジーっと見ていた。
「チャ?(秀吉さんも食べる?)」
秀吉「いや、俺はいらない。お前が食え。
しかし舞はどこに行ったんだろうな。やっぱり元の時代に帰ったのかな…」
肩を落としている秀吉さんは、いつもより小さく見えた。
「チャッ、チャッ!!(ここ、ここだよ!!)」
秀吉「ん?どうした。ほら、そろそろ寝る時間だぞ?」
用意されていた鳥籠の中に入れられてしまった。
パタパタと羽を動かしていると秀吉さんが覗き込んできた。
秀吉「おやすみ」
「チャ(おやすみ)」
本当は一緒に寝たいけど、今は鳥の姿だから我慢だ。
秀吉「本当にお前は言葉が理解できるみたいだな」
部屋が暗くなると鳥の習性なのか睡魔が襲ってきた。
私が羽毛にくるまって眠っている間、秀吉さんは何度も寝返りをうって眠れないようだった…。