第8章 姫がいなくなった(秀吉さん)
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その後羽黒はどこからか青菜を運んできてくれて、信長様はお米をくれた。
「チャ……(お米最高……)」
お米が入ったお皿でまったりしていると、秀吉さんの声がした。
秀吉「信長様、失礼します」
信長「入れ」
「チャ、チャ♪(秀吉さんだ♪)」
飛び跳ねた時にお米が一粒お皿の外に落ちた。
秀吉「あ、こら。食べ物を無駄にするなよ」
秀吉さんはお米をお皿に戻し、私を手の平に乗せてくれた。
秀吉「信長様、こいつの世話をしていただきありがとうございました。
舞についてですが、手掛かりはありません」
信長「目撃した者も居ないのか」
秀吉「はい。城中、城下ともに昨夜以降、舞を目撃した者は居ません。
部屋まで送った俺が最後の目撃者になります」
信長「普段と違う様子や会話をしなかったか」
秀吉「様子は変わりませんでした。酔っていたので、笑い上戸にはなっていましたが…」
「チャ……(恥ずかしい)」
秀吉さんは床の一点を見つめ、昨夜の会話に手掛かりがないか考えている。
秀吉「やはり何も気にかかるような会話はしませんでした」
信長「そうか……」
秀吉「これだけ探しても見つからず、部屋の様子も誰かにさらわれたというよりも、消えていなくなったような状態でした。
元の時代に帰ってしまったのではないかと危惧しております」
「チャ??」
信長「………」
秀吉「………」
深刻な顔をした二人に、鳴き声ひとつあげられなかった。
『どうしたら私がここに居るって教えられるんだろう』
チャ!しか言えないし、手も使えないし、首はあんまり動かない。
考えていると外から鳥の鳴き声が聞こえてきた。
『わぁ、素敵な声』
「チ、チ、チャチャチャ(もっと鳴いて欲しい)」
信長「お前の番(つがい)の声か?」
「チャ!?(違う違う!)」
秀吉「帰りたければ帰って良いからな」
秀吉さんの膝の上で羽をパタパタさせる。
「チャ!チャチャ!!(私の恋人は秀吉さんだもん!)」
信長「……何やら怒っているぞ」
秀吉「信長様もそう思われますか?ふっ、変なやつ、よしよし」
秀吉さんがひとさし指で頭を撫でてくれた。