第8章 姫がいなくなった(秀吉さん)
大広間に人が集められた。
昨夜の宴での様子を皆で思い出し、秀吉さんは部屋まで送った時の様子に変わりがなかったことを報告していた。
門番の人達まで呼び出して人の出入りを聞いているし、本当に申し訳ない。
信長「このままでは埒が明かん。部屋へ行く」
滅多に私の部屋にこない信長様まで夜着を確認しに来た。
信長「まるで蛇が脱皮した時のようだな」
「チャチャァ……(酷いよ、信長様)」
比較対象が蛇なんて……。
抗議の鳴き声を小さくあげると緋色の瞳が私を捕えた。
信長「秀吉、その鳥はどうした?」
秀吉「舞の部屋の前でばたついていたところを保護しました。
飛べない様子だったのでどこか怪我をしていると思われます」
家康「怪我?見せてください」
家康の手に乗せられ、羽を広げられた。
骨格をなぞるように触(さ)わられると、わきの下や二の腕の内側をくすぐられているような感覚がした。
「チャチャッ…チャッ!(くすぐったいよ、家康!)」
家康「こら暴れないの」
「チャ……」
家康「おかしいですね、どちらの羽も正常です」
秀吉「そうか?飛び上がれないようだったんだが」
家康が腰をかがめて体勢を引くくし、そこから私を下へと放った。
「チャッ(わわっ!?)」
跳び方を知らないので無様に羽をばたつかせて廊下に降りた。
使い勝手のわからない足でカシカシと廊下をひっかき、羽の仕舞い方もスムーズにはいかず、時間がかかる。
「チャッ、チャッ!(何すんのよ、もう!)」
小さくなった心臓はちゃんと動いているようで、パクパク脈打っている。
家康「ほんとだ、飛べないみたいですね」
信長「成鳥のようだが、飛び方を知らぬようだな…」
信長様に掴まってしまった。
鳥目線で見る信長様は迫力がある。