第8章 姫がいなくなった(秀吉さん)
秀吉「舞!?どうなってるんだこれ……」
脱いで置いたとしてもこんな風にはならないだろう。本当に寝たまま小さくなったのだと落ち込んだ。
秀吉さんは夜着に触れようとして手を引いた。
おそらくこの異常な状況を残しておくためだろう。
秀吉「舞っ!舞!おい、誰か居るか!?」
秀吉さんの声で、私に付いている女中さんが慌てた様子で駆け付けた。
女中「秀吉様、お呼びでしょうか?」
秀吉「今日舞の姿を見たかっ?」
女中「いえ……。姫様が起きるにはまだ早い時間ですし、まだ見ておりません」
秀吉「声をかけて襖を開けたらこの状態だった」
女中さんは部屋の中の布団を見て、口元を手で覆った。
女中「まぁ!!これは……」
秀吉「ただの杞憂(きゆう)かもしれない。念のため、この部屋の近辺を徹底的に探してみてくれ。俺は他を見てくる」
女中「は、はい」
女中さんが廊下を急ぎ足で歩いていく。秀吉さんはそれとは逆の方角へ……
『あ、置いて行かないで!』
入口まで行き、締まりそうだった襖の隙間に滑り込んでなんとか廊下に出た。
「チャ!チャ!!(秀吉さん、行かないで!)」
羽ばたこうとして廊下に落ちる。
バタバタと羽をばたつかせていると秀吉さんが振り返ってくれた。
秀吉「ん?なんだお前、羽を怪我しているのか?」
廊下に這いつくばるようにしていたから、そう見えたのかもしれない。
秀吉さんの手が伸びてきて、身体を持ち上げてくれた。
秀吉「悪いが今取り込み中なんだ。少し我慢してくれ」
「チャ!(もちろん!)」
秀吉「ん?返事するなんて、変わっているな、お前」
厳しい顔つきだった秀吉さんが一瞬笑ってくれた。
「……(かっこいい…)」
秀吉さんは手のひらに私を乗せたまま、城のあちこちを探してくれた。
私はここに居るって伝えたくてもできないし、きっと信じてもらえないだろうと黙って手のひらに座っていた。
女中さんと秀吉さんが合流し、私がどこにも居ないとわかり、騒ぎはいよいよ大きくなっていった。