第7章 姫が居なくなった(三成君)
三成「綺麗ですね…」
「花言葉があって…紫色のチューリップは……」
ますます頬を染める舞に、三成は優しく微笑んだ。
三成「なんですか?」
「……永遠の愛」
三成の頬が舞に負けないほど赤く染まった。
「私ね、三成君が好き。この気持ちは多分ずっと…永遠に変わらない」
三成「舞様………」
「チューリップはね、バラみたいに本数でも意味が違うの」
三成は持っている花束の花の数を数えた。
三成「12本……ですね」
「うん………。12本は………」
恥ずかしげに臥せられた目が潤んだ。
「12本は、『私と付き合ってください』っていう意味なの」
三成「っ…!」
三成が舞をひき寄せ、膝に乗せていた兵法の書がぱたりと落ちた。
三成「もちろんです、舞様!私もあなたのことをお慕いしていました。
ずっと前からです。もっと早く伝えていたならと、あの日以来ずっと後悔しておりました」
「ふふ、嬉しい、三成君……。消える瞬間、三成君が言ってくれた言葉が凄く嬉しかったの。私も三成君のこと愛しています。傍に居させてくれますか?」
抱き締めてくれる腕に舞は甘えるように体重をかけた。細いようで鍛えられた腕はそれを難なく受け止める。
三成「はいっ!ずっと傍に居てください。あなたが戦場に出なくても良いように、私の横で笑っていられるように、そんな世を目指します。
長くかかりましょうが、隣で見ていて頂けますか?」
「うん、もちろんだよ、三成君」
二人の間にある花束を潰さないよう、遠慮がちに唇が寄せられた。
家康「はぁ……あの二人、絶対俺達の存在を忘れてる」
光秀「まったくだ。邪魔しないよう去ってやろう」
くく、と光秀が小さく笑い、政宗は遠くに控える女中を手招いた。
政宗「ついでに人払いもしてやるか」
三人が去ったことにも気づかず二人は睦み合っている。
三成「舞様、おかえりなさい。もうどこにもいかないでくださいね?」
「うん、ずっとここに居るよ、三成君」
三成「愛しています」
「ふふ、愛してるよ、三成君。ずっと、ずっと……」
すれ違った二人の気持ちは春の訪れとともに結びつき、二人の永遠の誓いを紫の花だけが聞いていた。
END