第7章 姫が居なくなった(三成君)
家康「後で絶対返してよ」
思わず手に取っていた本の先を見て、三成はやっと家康の存在に気が付いた。
猫さんは三成に解放されて素早く逃げ去っていった。
こんなのがうちの参謀で大丈夫だろうかと家康がため息を吐いた。
三成「家康様でしたかっ、ありがとうございます!直ぐに読んでお返ししますね」
家康「急がなくていい。読んでる間は…忘れられるでしょ」
三成「何を忘れられるんですか?」
家康「ったく、イチイチ鈍いやつだな。いいから、ゆっくりじっくり読んで返してよ」
三成「そんなに面白い内容なのですね。楽しみです」
家康「はぁ……」
クスクスクス………
それをずっと遠くから見ている人間が居た。
手には濃淡様々な紫色のチューリップの花束を持っている。
小さい笑い声に気が付いた光秀と政宗が驚いたように振り返り、やがて笑みを浮かべて迎え入れた。
小さな足が三成に気付かれないように一歩、また一歩近寄る。
家康「……っ」
気が付いた家康が道をあけた。
三成は気づかずに兵法の書を開いている。
大好きな人の相変わらずの姿に、舞は満面の笑みを浮かべた。