第7章 姫が居なくなった(三成君)
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『勝手に想っているだけなら良いよね』と舞様は言っていた。
だけど勝手に想っているのがどんなに辛いことなのか、ここ数か月、私は嫌というほど味わいました。
(第三者目線)
三成「猫さん、少し頭を撫でる練習をさせてもらえませんか?
こう…?いや、いつもはこうだったかな…。そうだ、膝にも乗せなければ…」
三成が猫さんを膝に乗せようとして嫌がられている。
いつもは好き勝手させてくれる三成がしつこく撫でようとするものだから、猫さんは逃げ出そうとしている。
三成「はぁ……」
家康「ちょっと政宗さん、あいつをどうにかしてください。
辛気臭くてカビが生えそうなんですけど」
どうにかしろと言いながら、家康の手には大陸から渡ってきた兵法の本があった。なかなか手に入らない希少本だ。
政宗「舞が居なくなった途端にああだもんな」
政宗の手には盆があった。
放っておくと何も食べない三成のために、色々な具材を入れた爆弾おにぎりが皿に乗っている。
家康「居なくなってから気が付いてもどうにもならないのに。はぁ、本当に馬鹿なやつ」
政宗「居なくなってから気が付いたわけじゃないんだろうよ。
言い出すきっかけがなくてお互いすれ違ったんだよ」
家康「は?それじゃあ最初から両想いだったっていうんですか?」
光秀「そうだ。気付いていなかったのか、家康は」
影のように現れた光秀に、家康が『いつの間に……』と呟いた。
光秀の琥珀の瞳が、ひとり座っている三成に向けられた。
光秀「舞はおそらく三成の成長の邪魔にならないように遠慮し、三成は半人前の自分では舞を幸せにできないと遠慮したんだ」
家康「なんですか、それ……」
お互いを大事に思いすぎて、慕う気持ちがすれ違ってしまった。
家康「究極の馬鹿ですよ。あいつは…」
家康は二人を残し、三成に歩み寄った。
三成と猫さんの間に兵法の書を差し込む。
三成「おや?……こ、これは、なかなか手に入らない本ではっっ!!?」
ぼんやりしていた目がパチリと覚めたようだ。