第7章 姫が居なくなった(三成君)
三成「………っ」
(舞様が………帰ってしまわれた…)
500年先の世から来たと聞いた時、いつかは帰ってしまうのだろうと思った。
しかしいつしかそのことを忘れ、ずっと居てくれると都合の良いように考えていた。
(私は本当に……愚かだ)
謙信「……舞は一体何者だ?」
そうだ、この男の存在をすっかり忘れていた。
見ると謙信も虚をつかれた顔をしている。
三成「舞様のことは詳しくお話することはできません。
ですが尊い方だったことは確かです。こうして同じ時を過ごせたことは奇跡でした…」
謙信「死んで……しまったのか?」
一段と低くなった声には力が入っていない。
三成「いいえ。あの方が居るべき場所へ帰っていったのです」
居るべき場所という表現に首を傾げていたが、詳しく話せないと言ったせいかそれ以上の追及はされなかった。
謙信「そうか……生きているならば良い。生きていればいつか会えるやもしれん」
きっと私に聞きたいことはあるだろうに、謙信は静かに腰をあげた。
三成「そう…ですね」
(生きていても違う時間の流れを歩み続ければ、もう二度と会うことは適わない)
消えるのを目の当たりにして、今は…後ろ向きの考えしかできない。
先ほど放り出した刀を力なく拾って鞘に収めた。
謙信「舞との約束だ。今日のところはこのまま去るが、次はそうはいかない。
そのひ弱な腕をせいぜい磨いておけ」
三成「……はい」
(舞様の命を3度も助けて頂いた方と直接戦いたくないが…)
そんな義理に捕らわれては戦乱の世を乗り越えていけない。
今も、今後も謙信は信長様の前に必ず立ちはだかる男だ。