第7章 姫が居なくなった(三成君)
謙信を止めようとした舞様が体勢を崩して馬から落ちた。
謙信「舞っ」
三成「舞様!」
落馬しただけでも大ごとなのに、場所が悪かった。
馬と馬の間。
突然目の前に落ちてきた舞様に、驚いた馬が前足をあげて嘶(いなな)いた。
三成「っ」
がしゃっ!
馬の脚が落ちる場所を予測した時には刀を投げ出していた。
両足で馬を制し、両手で手綱を引く。
出来る限り馬の向きを変えたが足りず、馬の右足が舞様の肩にあたった。
「うっ!!」
ゴキッと太い骨が折れる音が聞こえた。
三成「舞様っ」
馬から飛び降りると、興奮した馬は走り去っていった。
三成「舞様!」
倒れている舞様に駆け寄ると、謙信までも下馬して膝をついた。
小さな身体は声をかけても動かない。
謙信「舞っ、しっかりしろ!
貴様…っ、女の身を傷つけてなんとするっ」
責め立てる表情は鬼気迫っていた。
本気で舞様を案じている。
三成「申し訳ありません…間に合わず…」
左右色違いの目が、私の両手を見た。
手綱を引いた時に出来た傷から流血している。