第7章 姫が居なくなった(三成君)
互いの馬が足踏みする中、考える。
舞様は命を助けてくれたことに恩を感じ、私達に謙信のことを話さなかったのだろうと。
三成「本当にあなたは……お優しい方ですね」
「三成君…ごめんなさい」
三成「謝る必要はありませんよ。あなたにはそのまま綺麗な心を持ち続けて欲しい」
舞様は目を瞠り、謙信は私に向き直った。
謙信「……無駄話はその辺にしろ」
「きゃっ!?」
謙信は馬を近づけ、斬りかかってきた。
後ろに人を乗せているとは思えない早業で刀が迫ってきた。
三成「っ」
ギィン!!!
刀を抜くのが一瞬でも遅れれば間に合わなかった。
重い一撃を横に流した。
「や、やめてください。謙信様。お願いです!三成君を傷つけないでくださいっ」
謙信「黙っていろ」
「っ!」
刀がぶつかり合う度に舞様の身体が小さく縮んでいくようだった。
謙信にしがみついている手は力が入り過ぎて白くなっている。
謙信「……?何故俺の刀をそう受け止められる?」
三成「あなたの刀をふるう姿を見たのは今日が初めてではありません。
以前見た時のクセや攻めの嗜好は私の頭に入っております。こうして刀を交わす程、あなたの刀は私に届きにくくなるでしょう。
…………討ち死にのお覚悟を」
私は政宗様や信長様のような刀の才能はない。だが相手の動きを知り、予測することはできる。
相手がたとえ軍神であろうと。
謙信「ならばお前が頭で処理するよりも早く刀を振るえば良いのだな」
相手にもならないと思っていた私に歯向かわれ、謙信の気に障ったようだ。
謙信が手綱を捌くと白馬が一層近くに寄ってきた。
謙信「覚悟を決めるのはお前だ、石田三成」
来ると思った逆の方から責められ、初動が遅れた。
「だ、駄目、やめてっ!きゃっ!?」