第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
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「書面のここ、字に誤りがありますが、このままでよろしいですか?」
小姓1「ああ、それはまずいな、書き直そう。尚文、謙信様に届いている文の整理をしておいてくれないか」
「それならば終わっております。こちらの5通が重要な文だと思われます。あちらにまとめておいたのは、たいした内容ではありません。
ですが一応あとで確認してください。私程度の者が重要度を推し量るのは難しいので」
小姓1「助かる。書面を書き直したらそちらの文の確認をしておく」
その時、襖がスッと開いた。小姓の先輩が困り顔で部屋に入ってくる。
小姓2「誰か兼続様がどこにいらっしゃるか知らないか?文を届けに行ったのだが見当たらない」
「……昨日の話ですが、今日の昼から武器の貯蔵庫に行くと言っておりました。
確かな情報ではないのですが…」
小姓2「っ、そこは探さなかった。いってくる」
慌ただしく足音が遠ざかっていく。
小姓1「尚文は優秀だな。細かいところに気が付くし、俺達が仕事をしている部屋も随分と片付き、綺麗になったものだ。
城の者達の中にはお前のことを悪く言っている者も居るが、一緒に仕事をしている俺達は助かっているよ」
「ありがとうございます。兄上の代わりとしてお役に立てるか不安でしたが、そう言って頂けると嬉しいです」
見た目ばかりが美しく役にたたない男だと噂が立っていた。
地味に仕事をしているつもりなのにどうして悪い噂がたつのだろうと不思議に思っていたけれど、それは思いも寄らない場所でわかることになる。