第7章 姫が居なくなった(三成君)
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互いの胸に燻る想いを抱えながら、私達は戦場に立つことになった。
私は前線に立つ家康様の後方支援を命じられ、舞様は救護班の一員として、私の隊に配属された。
三成「舞様、なるべく隊の真ん中に居るようにしてください」
「うん。三成君は一番前なんでしょう?気をつけてね」
三成「ありがとうございます。舞様は信長様が大事にされている方です。
必ずお守りしますので安心してください」
舞様が顔を曇らせた。
あなたが欲しい言葉は『私の大事な方なので』必ずお守りしますでしょう?
(申し訳ありません、舞様………)
政宗様が言う通り、ハッキリ断れば舞様にこんな顔をさせることもないのに。
あなたを想って手放す勇気が、どうしても持てない。
もしかしたら半刻後、数日後に目標が見つかるかもしれないとグズグズしている。
これが戦ならば、参謀失格だ。
「……うん、ありがとう。迷惑かけないようにするね…」
寂しそうに笑う舞様を隊の真ん中に置き、私は先頭に立った。
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家臣「背後から上杉軍の急襲です!」
三成「仕方がありません。このまま東へ向かい、光秀様と合流しましょう」
馬の足を速め、移動をする。
救護の天幕を張る間もないほど、敵の手は四方から伸びてきた。
(乗馬できるようになって間もない舞様はついてきているだろうか…)
護衛を幾人かつけておいたが、幾度も受けた急襲に隊の列が乱れている。舞様の傍についているか些か心配だ。
三成「隊列が乱れています。移動しながら整えるよう後方に伝えて下さい!」
家臣「はっ」
横を走っていた一人が馬の足を緩め、後方に指示を出している。
(これで大丈夫だ)
私達は急襲を振り切り、家康様と政宗様が戦っている激戦地の傍を通り抜け、光秀様の隊と合流した。