第6章 姫がいなくなった(光秀さん)
「あっちについた瞬間は嬉しかったんです。もう息苦しい生活をしなくて良いんだって。
ずっと切りたいのを我慢していた髪を切りに行って、洋服を着て、スニーカーを履いて出かけて…なんて自由なんだろうって感動しました」
光秀「……」
「刀を持っている人だっていないし、何もしていないのに悪く言う人も居ないし、家族や友達だって凄く心配して探してくれていて…やっぱり私が居る場所はここなんだって思いました」
光秀「そうだろうな……」
ここでの待遇はあまりにも不憫だった。
元の場所に戻れて嬉しいと思うのは当然だろう。
「でも……もらったお稲荷さんを見ると何故か戦国の世に戻りたいと思ったんです」
光秀「なに…?」
「なんで光秀様は私が居なくなると寂しいって言ってくれたのか、なんで遠出に誘ってくれたのか…お稲荷さんをくれるために言ってくれたのかな、とか。
ちまきを連れてきてくれて…優しかったなって……。
光秀様の綺麗な琥珀色の目を、もう一度見たいなって、そう思いながら過ごしていました」