第6章 姫がいなくなった(光秀さん)
舞が『光に飲み込まれて消えた』という話は、瞬く間に城中に広がった。
目撃した見張り達に口止めしなかったのは、舞が罪の発覚を恐れて逃走したと誤解されないためだ。
いなくなったとはいえ、これ以上無実の女に泥を塗りたくなかった。
舞に冷たく当たっていた者達は何か祟りが起こるのではと怯えているようだった。
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光秀「以上で毒針の件は解決致しました」
上座に座る信長様に事件の報告をすると、大広間に集まった家臣達からため息が聞こえた。
黒幕と舞は、なんの繋がりもなかった。
事件を起こした大名も、その下で実行した者も、舞という女は知らないと口を揃えた。
名前を聞いた事もないし、一体誰なのかと逆に聞かれる始末だった。
未来から来て城に閉じこもっていた人間が、遠国の大名と繋がっているはずがなかった。
光秀「舞姫の疑いはこれで晴れましたか?各々方(おのおのがた)」
舞を罪人扱いした家臣と、それに便乗していた者達に視線を向けると、気まずそうに視線をずらされた。
光秀「信長様の命を二度も助けた姫は、いわれなき罪をかぶせようとするお前達に呆れ果て、天上に帰られてしまったぞ?」
消えた舞は今や天人だったのではと噂されるようになっていた。
それを利用して脅しをつける。
光秀「得体が知れないからと偏見を持ち、弱き者を貶(おとし)めようとする腐った心根は早々に正して頂こう。
そのような小者、信長様のお傍に居る資格はない」
家臣達「はっ!!」
広間に居た者達は一同に頭を下げた。
こうして毒針事件は解決し、舞の名誉は回復した。