第6章 姫がいなくなった(光秀さん)
それから幾日が過ぎ、放っていた斥候が戻ってきた。
黒幕はわかったが舞との繋がりがないと証明しなくてはいけない。
予想はしていたがここからが面倒な仕事だ。
光秀「また安土を出なければならないな」
仕度していると秀吉が訪ねてきた。
ちょうど良いと黒幕の正体を報せ、これから出立予定だと説明した。
秀吉「わかった。信長様には伝えておく。
今日は舞に頼まれてこれを届けにきた」
光秀「?」
秀吉「この間の礼だと言っていた。見張りの者に頼んだが断られ、俺に話が回ってきた。見張りの者達の目があるところで検品して、持ってきた」
光秀「気持ちは有難いが、これはなんだ?」
秀吉「あいつの国で枕といえば、これらしい」
光秀「枕?」
長方形の形をした枕は、動かすとザラ…と音がする。
秀吉「中身は小豆と蕎麦殻だった。
表裏で寝心地が違うから好きな方を使って欲しいと言っていた」
光秀「中身を見たのか?」
秀吉「ああ。俺達が中身を確認してから、目の前で枕の端を縫い合わせたんだ。
今は指を痛めているからたどたどしかったが、治れば針子にでもなれそうな手つきだった」
光秀「そんな特技があったとは知らなかった」
秀吉も頷いた。
秀吉「自分のせいでロクに寝ていないだろうから、って言っていた」
光秀「そうか…。せっかく作ってくれたのに使わないまま出かけなくてはならんな。城を出る前に顔を見せに行く」
秀吉「そうしてやってくれ」