第6章 姫がいなくなった(光秀さん)
俺が真犯人を見つけるまで、舞は自室軟禁の処置をとられた。
舞の存在を毛嫌いした家臣達が、犯人かもしれない女を自由に歩かせるのは問題がある、と騒いだためだ。
大広間でその沙汰を聞いた舞は氷のように冷たい顔をして返事をしていた。
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光秀「入るぞ」
見張りを立てられた舞の部屋を訪ねた。
2人の見張り達は俺が抱えているものにわずかに動揺を見せたが、関わりたくないようで目をそらした。
「どうぞ」
襖を開けると舞は何か縫い物をしていた。
針を持っている右手の人差し指と親指には布が巻かれている。
毒を直接触った影響で皮膚が爛れてしまったらしい。
光秀「5日安土を留守にしていた。元気だったか?」
「えぇ……それより、光秀様。手に抱いているのは…?」
抱いているというより、腹に手を回して小脇に抱えているのだが…。
光秀「これはちまきだ。俺が飼っている…というより、勝手に御殿に棲みついた狐だ」
畳におろすとちまきは不慣れな場所を確かめるように匂い確かめている。
「……白い狐なんて初めて見ました」
光秀「まじめくさった顔をしていないで触りたかったら触って良いぞ?」
「え…いいんですか?」
光秀「そのために連れてきた。部屋に閉じ込められて暇だったろう」
「ありがとうございます。わぁ、フワフワ……キツネの毛ってこんなに柔らかいんですね。
ちまき…ちゃんかな、君かな…」
光秀「そいつはメスだ。女同士、仲良くしてくれよ?」
「はい。ちまきちゃん…よろしくね」
ちまきはクンクンと手の匂いを嗅ぎ、首をかしげた。
「…もしかして臭かったかな」
不安そうに自分の手の匂いを嗅いでいる。
庭で見た時のような素の顔だ。
光秀「そっちは怪我をしている手だろう?薬の匂いかするから変な匂いだと思われたのかもしれないぞ。」
「そうか…。じゃあ、こっちの手は平気かな」
光秀「大丈夫だ、そのうち慣れるだろう」
「きつねって思っていたよりも大きいんですね。
目なんかシャープで光秀様そっくり」