第39章 桜餅か桜酒か(信玄様&謙信様)
戦ごとに女が意見するなど無礼者と罰せられてもおかしくなかったが、信玄は持ち前の懐深さを披露して柔軟に受け止め、舞を遠ざけるどころか自ら距離を縮めたのだ。
(信玄様のまえで『帰りたい』と言ったこともないのに…)
理解を示されたことで舞の胸がキュンと音を立てた。
謙信「……季節を問わず求愛せねば舞の心は落ちまいな。
軽々しく信玄に唇を許すな。こっちを向け…」
舞の顎に指がかかり、くいっと顔の向きを変えた。
まだ口づけの余韻にぼうっとしているところに今度は謙信が唇を奪う。
「っ……!?」
2人の男から続けざまに口づけされて舞は目を白黒させていたが、間近にある美貌を見ていられず目をぎゅっと閉じた。
ぬるりと入りこんだ謙信の舌からは桜酒の香りがして、突然のことに惑っていた舞の舌は簡単に捉えられた。
小さな舌を擦りあげられ、2人の唇の隙間から濡れた音が漏れる。
謙信は歯列の浅い凹凸を楽しむように舌でなぞり、逃げようとする舞の後頭部を押さえ込んで上顎まで舐め尽くした。
唇が離れた頃にはすっかり舞の腰は砕け、謙信は腰を支えてやりながら耳元で囁いた。
謙信「お前は色薄く、いつ消えるか知れなかった。
桜の花も…、この世のどの花も舞には適(かな)わない。
お前以外の女などいらない。一生、舞一人を愛すると誓う」
氷の心の持ち主かと思いきや一途で熱心な言動に、これまた舞の心がトロリととろける。
しかし舞は2度もキスを許したことが悔しくて、蕩けた顔を取り繕って眉をひそめた。