第39章 桜餅か桜酒か(信玄様&謙信様)
謙信「少々待たされるのはいたしかたないが、これからはいかに俺が想っているか求愛する。
拒むことは許さん。いいな?」
信玄「それは俺も同意見だな」
念押しする謙信にちゃっかりと便乗して、信玄も舞を見つめている。
「きゅ、求愛………っ!?」
2人から?とでもいうかのように舞は謙信と信玄を交互に比べた。
可愛い反応だと、まず動いたのは信玄だった。
信玄「ちょうど求愛の春だしな、早速してみようか」
「え?」
信玄が何を『してみようか』と言ったのか舞が考える間もなく、火照った片頬に手が添えられ、少し開いていた唇が塞がれた。
一連の動きは水が流れるがごとく、信玄が動いた時点で口づけは必然だった。
「…んっ………!?」
熱い舌が舞の口腔にスルリと侵入し、桜餅の香りと餡子のほのかな甘さを分けるように絡んでくる。
濡れたリップ音を聞かされて謙信が殺気を放ったが、気づいたのは信玄だけで舞は巧みな舌使いに翻弄されていた。
信玄は舌を絡ませたまま何度も口づけの角度をかえ、舞の目尻が潤んだ頃にやっと唇を離した。
「はっ、はぁ……し、信玄様……」
濡れた目で甘い息を吐く舞を、信玄は目を細めて見つめた。
もう気持ちを隠す必要はないと、溢れる想いをそのまま言葉に乗せた。
信玄「舞がこの時代に来たばかりの頃、『いつも強い姿を見せるのは凄いけど、頼る時は頼らないと団結力が鈍る』って言ってくれただろう。
未来から来た君はあまりにもまっさらで、何もできないだろうって思っていたのに、俺は部下の気持ちをないがしろにしていたと気づかされた。
それからはもう舞のことしか見えなくなっていた。
君が故郷を夢見ていてもいい。それは仕方のないことだって俺はわかっているつもりだ。
例え1年でも君と過ごしたいんだ。来年もその次の年も、桜餅を出してもらえるよう身を尽くして愛するよ」
「信玄様…」