第39章 桜餅か桜酒か(信玄様&謙信様)
「もしかして私の番号を見たんですか?」
謙信「不正はしていないぞ。
お前が棒を隠す瞬間に番号が『見えた』だけだ」
「見えた?私、サッと引いて、サッと仕舞ったつもりですけど、あ……!」
(動体視力…っ!)
佐助君が言っていたことを思い出し、息をのんだ。
この人は常日頃から電光石火の軌跡を目で追っている人だ。
私の『サッ』が止まっているように見えてもおかしくない。
(不正じゃなく実力で見えたんだ…く、くやしい!)
それに納得できないのは王の命令だ。
「不正をしていないのはわかりましたが、どうして私をお傍におきたいと命令したんですか?
お仕事を手伝って欲しいとか?」
謙信「そのようなつまらない事はさせん。
半日、存分にお前を可愛がりたいだけだ」
「可愛がるって…、私は謙信様の鍛錬にお付き合いできませんが?」
謙信様が『可愛がってやろう。刀を抜いてそこに立て』と幸村や佐助君に刀を振り回していたのは昨日のことじゃなかっただろうか。
私もついに刀の鍛錬相手にされるのかと絶望していると…
謙信「何を馬鹿なことを。可愛がるとはこういうことだ」
謙信様は眉をひそめながら私の唇を指でなぞると、そのまま頬をするりと撫でた。
透明感のある二色の瞳が煌めき、一心に私を見つめている。
「っ!?!?」
謙信「1年待ったぞ。だがな、いい加減お前の鈍さには我慢ならん。
半日かけて俺がどれほどお前を愛しているか教えてやる」
「愛……え?謙信様が?」
(自慢じゃないけど『愛してる』って言われたことないよっ!?)
(謙信様級のイケメンが私を愛してるって嘘でしょ?)
(女の人が嫌いとか面倒だって言ってたのはどうしたの?)
(1年待ったってどういうこと?
理解不能……フノウ……フノー…………)