第39章 桜餅か桜酒か(信玄様&謙信様)
謙信「色よく染まった花は愛らしい…」
「か、からかわないでください」
ここまで言われれば自分が花に例えられているのだとわかる。
謙信「女を揶揄う趣味はない。本心から愛らしいと言っている」
低い声に確かな熱が滲み、語尾が掠れた。
まるで大切な人を腕に抱いているかのような表情や声色に、私の胸は急激に膨らんでパン!とはじけた。
(何これ、謙信様の前でこんな気持ちになったことなかったのに!)
顔を覆って混乱している間も、謙信様が髪を梳くので治まってくれない。
佐助「謙信様。幸せ満喫モードのところすみませんが、そろそろ帰る時間のようです。
次で最後にしましょう」
「謙信様、ほら、次ですって。おろしてください!」
謙信「もう少しこのままでいさせろ。
肌寒くなってきたから俺で暖をとれ」
「ええぇ……?」
どうしても謙信様が離してくれなかったので、仕方なく抱かれたまま棒を引くことになった。
棒先を手の平で覆って確認すると4。
その数字を誰にも見られないようにサッと懐に隠した。
(今度は命令されない番号だといいな)
王様が誰かみんなの顔を伺っていると、背後からひと声かかった。
謙信「俺が王だ」
え、と見れば謙信様の棒に王冠のマークが書かれている。
(謙信様が王様っ!?何を命令するんだろう。
あ、今すぐ刀の訓練相手になれとか?)
佐助君と幸村も同じことを思ったのか、いつでも逃げられるように腰を浮かしている。
最後の命令を皆がじっと待つ中、謙信様は私を見下ろしながら薄く微笑んだ。
(なんだろ、嫌な予感がする…)
低い声が朗々と命じた。
謙信「今日が終わるまで、4番は王の傍を離れるな」
「っ!?」
(見られないようにすぐ仕舞ったのに、まさか私の番号を知ってる!?)
間違いじゃないよねと手のひらを開けると、やっぱり私の番号は4番だ。
幸村「やべえ、俺5番だった」
佐助「俺は3番だ」
兼続「2番だ…」
各々ほっとしているが、2回続けて命令されてしまった身としては羨ましい限りだった。