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☆姫の想い、彼の心☆ <イケメン戦国>

第39章 桜餅か桜酒か(信玄様&謙信様)


佐助「あれは目の周りが白くなかったからウグイスだ」


タイミングよくホーホケキョッ!と元気な啼き声が聞こえて、私はすごいっ!と軽く手を叩いた。


「よく見えたね、佐助君!」

佐助「戦国時代に来てから動体視力を鍛えられたからね。
 俺よりも謙信様のほうが抜群にいい。
 この石に文字を書いて思いきり投げても読めると思う」

「ふふっ、凄すぎてなんて言ったらいいかわかんないよ」


謙信様達の方をチラッと見て、小さく息を吐いた。
今しがた普通に笑っていたのに急に憂鬱さが心を曇らせた。


「去年、佐助君と一緒に桜の葉や花を塩漬けにしたでしょ?
 実は作りながら『来年の春は現代に帰っているかもしれないな』って思っていたんだ。
 でも結局この時代で2度目の春を迎えちゃって、桜餅も桜茶も、皆が褒めてくれると嬉しいのに、なんか寂くて複雑なんだ…」


去年の今頃は『1年もあれば現代に帰れるだろう』と楽観的に考えていたが、ワームホールは気配さえなく、さらに誘拐・監禁など、身の危険を感じる出来事が何度もおこった。

タイムスリップ現象がそう簡単におこるわけないのに、楽観的に考えていた1年前の私はどこまで甘すぎた。


佐助「舞さんは現代に帰りたい?」

「ん-…五分五分かな。事件にまきこまれると帰りたいって思うし、皆でワイワイしてるとここで生きるのもいいかなって思うし」


佐助君の見立てでは『少なくとも1年間はワームホールの兆候0%』とのことで、私としてはそろそろ現代へ帰るのを諦めて、この時代で生きていく覚悟を決めた方がいいんじゃないかと考えていた。

家族に電話したい。街を歩いて買い物して、美味しい物を食べて、友達とばったり会ってそのまま遊びにいきたい。SNSで繋がっていた人達ともやり取りしたい。

現代を想うとどうしたって寂しいし、この時代で生きていけるのかという不安に襲われる。

戦国時代を選んだとして、いつしか無理に笑うようにならないだろうか。

いくら考えても答えは出てこない。


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