第5章 姫がいなくなった(元就さん)
元就「はっ、そんなの信じられると思うか?」
「だって本当のことなんです…。さっき元就さんに『戦の駒としか見ていない』って言われて、凄く……っ、悲しくて……」
零れた涙が頬を濡らした。
「…このまま拳銃で撃たれた方が良いと思ったくらいです……っ」
舞は撃たれてもいないのに胸を押さえて後ずさった。
「信じてもらえないなら、それで良いです。でも…スミマセン。
戦の駒には…………なれません。あなたに利用されることに、私の心が耐えられない!」
舞は振り返って柵に足を掛けた。
乗り越えようとして…後ろから身体を抱きしめられた。
元就「誰が死んでいいって言った?
誰がお前の気持ちを受け取らないなんて言った?」
「え……?」
舞の身体から力が抜けた。元就は身体ごと自分の方に向けさせると舞の顎に手をやった。
元就「お前の口から他の男の名が出てきたら、撃ち殺しそうだった。そのくらい舞に惹かれている」
「じゃあなんで戦の駒だなんて…」
元就「そう簡単にホイホイ気持ちを言う程、安くねぇ。
あいにく俺は素直な性格じゃないしな」
「だ、だからって……う、酷い……緊張が解けたら、フラフラ……する……」
元就「っ!?おい!」
眩暈を起こした舞を元就が受け止め、舵助はまたしても元就をどついた。
元就「いて!舵助!あとで覚えてろよっ」
悪役の定番ともいえるセリフを言い残し、元就は舞を抱えて部屋へと戻っていった。