第37章 姫の年越しシリーズ(2025年)・1月1日
しかしスムーズに雪道を歩く政宗との距離は縮まらない。
当たり前だ、あっちは雪国生まれの雪国育ちなんだから雪道の経験値が違う。
「ちょっと、政宗!私を置いていったら護衛になんないじゃない!
ワワワッ、すべ、る~~~!!!」
太陽の光でテラテラと光る道は摩擦ゼロで、私の足をツルリと滑らせた。
ああ、晴れ着が台無し…と転ぶ覚悟した時には抱き留められていた。硬い氷にお尻を打ちつけなくて済んだと心臓がドキンドキンと音を立てている。
政宗「護衛が居て良かったな?」
したり顔で笑う顔がムカつくくらい格好良い。
「ふんっ。もともと置いていくのが悪いでしょ!」
政宗「もともと俺の支えを断ったのが悪い」
「ぅ…、なによ、もともと深夜に雨が降ったって教えないのが悪いっ!」
これ以上の『もともと』はないはず。ついに言い負かしたと思ったのに、
政宗「結構強く降ったんだぞ。気づかないで寝ていた舞が悪いだろ」
「ね、寝てたっていいでしょ、別に!」
これ以上、言い返す要素がない。ムッとしていると宥めるように頭に手が乗った。
政宗「寝るなら俺の隣で寝れば良かっただろ。
起き抜けに小十郎の渋い顔を見せられてみろ、気分が滅入ってしかたねえ」
「…それは広間で主人が寝ちゃったら渋い顔するでしょ
大みそかまで部下に仕事をさせる政宗が悪いんじゃない?」
(こんの色男…っ!
『寝るなら俺の隣で』なんてドキッとするじゃない、わざとなの?)
平静を装い歩き出そうとした1歩目。動揺を見事に引きずってズルリと滑った。
政宗「おっと、今日は本気で気をつけないとやばいぜ?
しっかり俺に掴まってろよ」
「う、うん」
こういう台詞がまさしく乙女ゲーみたいでこそばゆいんだけど政宗に言われるとこそばゆいだけでは終わらず、心臓がうるさくなって寒いのに暑いような訳の分からない状態になる。
そっと政宗の腕に掴まると、もっとしっかり掴まれと手の位置を変えられた。腕の筋肉やら羽織の感触、何から何までドキドキして頭が真っ白だ。
(刺激が強い…)
魅了されてクラクラしながら、近くの神社まで夢見心地で歩いていった。