第36章 姫の年越しシリーズ(2024年)・12月31日
————12月31日
年内最後の行事である餅つきが無事に終わったとなると、あと今年中にやることと言えば……………
「昆布巻き完成しましたー!」
早朝から2時間ぶっ通しで昆布を巻き続けた舞の前に、昆布巻が山のようになっている。
風習に大らかな現代と違い、戦国時代では三が日は包丁を使わない。
城にいる人数×3日分の食事となると、数日前から準備を始めていても厨は猫の手も借りたい忙しさだ。
おせちを作らない家で育った舞だったが、大みそかの厨の忙しさを聞いたらじっとしていられず、お手伝いに回っていた。
政宗「大変だったろう、お疲れさん。悪いがこっちに来てこの鍋をかき混ぜてくれ。
いいか、今更代えの食材は無いからな、絶対焦がすなよ」
「そう言われると余計焦がす気がするんだよね」
政宗「んなもん、現実にならないように努めればいいだろ」
舞は昆布の匂いが沁みついた手で、給食室で使われるような大きな木べらを手に取った。さっきまで政宗が握っていたのだろうか、仄かに人の温もりが残っていた。
鍋の中はクチナシの実で黄色く色づけしたサツマイモが、砂糖や蜜と一緒になってふつふつとなっている。
「やったー!栗きんとんだ♪」
舞は甘い香りを目一杯吸い込んだ。
朝から醤油と昆布の匂いを嗅ぎ続けていたのもあって甘い香りに嗅覚が喜んでいる。
政宗は鍋が動かないように両手で取っ手を押さえた。
筋肉質な腕にスジが浮かび上がり、鍋を押さえているだけで妙に格好良い。
政宗「ついさっき蜜を入れたところだ。上手く練ろよ」
「とにかく混ぜればいいんだよね。う、重い……!」
政宗「腰がなってねえな。腕の力だけじゃなく、腰や背中でやらねえと腰痛めるぞ」
「そんなこと言ったって、ふんっ!
おもっ…!ぐぎぎぎ、ふ…っおぉ~~」
顔を赤くして懸命にサツマイモを練る舞に、政宗は盛大に吹いた。