第34章 呪いの器(三成君)
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(第三者目線)
療養に出ていた舞姫が安土城に戻ったという噂は瞬く間に世に広がった。
安土の気運は高まり、信長が天下統一に向かって躍進した影で、呪いの器に関する書物は禁書として秘密裏に焚書された。
呪いの器を作った最後の人物となった椿の名は、生まれの記録まで遡って消されたことで、この世に存在しなかったことになった。
大名一家やそこに仕える者達も椿の存在を切り捨て、その名を口にする者は居なくなった。
ただ一人。舞姫の隣で優しく笑いかける三成の胸の中にだけ、その名が残るのみ。
呪いの器は恨みが深いほど人を魅了する美しい姿となり
身につけた者はやがて苦しみの果てに命を落とす
未完の恨みは器の呪いを深め
強欲をもってして主の血を欲するだろう
END